転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


247 とっても高いけど、欲しい人はいたんだってさ



 ロルフさんちの人なんだけど、頼んだらあっという間にセリアナの実を買って来てくれたんだよね。

「それではまず、中のジュースを頂くとしようかのぉ」

 でね、まずはジュースを飲んじゃわないと果肉を取り出せないって事で、実に穴を開けてみんなでごくごく。

 流石に買って来たのを全部飲むのは無理だけど、僕とお母さん、それにロルフさんとバーリマンさんで分けて飲んだもんだから、二つの実が空になったんだ。

「それじゃあ穴、あけちゃうね」

「うむ。よろしく頼む」

 中のジュースを飲んじゃったセリアナの実なんだけど、村では鉄のハンマーで割ってるんだよね。

 でもここでそれをやっちゃうと中の果肉が部屋の中に飛び散っちゃうからって事で、今回は僕がドリルの魔法で直径10センチくらいの穴を開けてあげた。

「果肉はそのまま取り出せばいいのですか?」

「ええ。村ではそうしていますわ」

 そうやって穴を開けた後はお母さんとバーリマンさんの出番。

 二人して穴の開いた二つのセリアナの実から中の白いドロッとした果肉をかき出すと、それが入った大きな木の入れ物を僕の前に置いたんだ。

「それじゃあルディーン君、お願いね」

「はーい!」

 と言うわけで、ここからは僕のお仕事。

 まずはこのセリアナの実の果肉からポーションの元になる油の抽出だ。

 とはいっても、今は油を指定して抽出するより中の繊維を取り出した方が早いって事が解ってるから、指定するのは繊維の方なんだけどね。

「おや? ポーションを作る時はセリアナの果肉から材料となる油を抽出すると聞いておったが、今はやり方を変えておるのかのぅ?」

「うん。こうしたら、入れ物が一個で済むんだよ」

 実はこれに気が付くまではいっつももう一個別の入れ物を用意して、わざわざそこに中に抽出した油を入れてたんだよね。

 でもある日、抽出し終わった方の入れ物にはおトイレの紙に使うサラサラの繊維しか残ってないのに気が付いて、こっちを取り出せばもう一個の入れ物はいらないんじゃないかなって思ったんだ。

 だってこのサラサラの繊維、油を取っちゃうと触っても手にくっつかないから、ほうきとかでササっと片づけられるからね。

「なるほどのぉ。そしてこの繊維がトイレの紙になると言うわけじゃな。ふむ。特に香りもないし、肌触りも良い。思うに、こちらはポーションの材料にするわけではないのだから、中のジュースを取り出してから時間が経ってもこれと同じものが取れるのではないかな?」

「やった事ないから解んない。でも、多分取れると思うよ」

 ロルフさん、なんで急にお尻をふく紙の材料にしてる繊維の事をこんなに聞いてくるんだろう?

 僕がそう思ってると、それが伝わったのかロルフさんが笑いながらその理由を教えてくれたんだ。

「いやなに、ルディーン君に教えてもらった紙の事じゃが、裕福層の中には興味を示す者もおるのではないかと前に話したが、実際に一度手にしてみたいという物がおってのぉ。じゃから、機会があればもう一度現物を手に入れたいと前々から思っておったのじゃよ」

「そっか。じゃあ、詳しい作り方も教えといた方がいい?」

「うむ。そうしてもらえると助かる」

 前にお尻をふく紙の事を話した時は錬金術師が取り出して魔法使いがクリエイト魔法で作んないとダメだから普通は高くて使えないって言われたんだけど、それでも使ってみたいって言う人はいるんだね。

 別に秘密にしてるわけじゃないし使ってる材料もそんなに珍しいものじゃないから、僕はロルフさんに作り方を教えてあげる事にしたんだ。

「なるほどのぉ。して、その粘りのある草と言うのは、ルディーン君が使ったものでなければならぬのか?」

「ううん。くっつけるのにいるだけだから、乾いたら固まるものなら何でもいいと思うよ」

 乾いた時にあんまり固くなっちゃうものだとダメかもしれないけど、僕が村で使ってるやつじゃないとダメかって言うと、そうじゃないと思うんだよね。

 だから大丈夫だよって言ったんだけど、

「ギルマスよ。ポーションの材料の中にも何か一つくらいは粘りのある薬草があろう? それを一つ出してもらぬかな?」
 
 そしたらロルフさんが錬金術ギルドにある粘りのある草を出してってバーリマンさんに頼んだんだ。

「それはいいのですが……今からあの紙を作るのですか?」

「うむ。わしらでは肌用ポーションを作る事が出来ぬからのぉ。じゃから、まずルディーン君に見本を一つ作ってもらって、彼がポーションを作っている間に練習しようかと思っておるのじゃよ」

 そう言えば前に二個以上の材料を使ってクリエイト魔法を使う時は、目の前に見本があっても練習しないとできないって言ってたっけ。

 だからロルフさんは、僕がお肌つるつるポーションを作ってる間にその練習するつもりなんだってさ。

「それにうまくできない時は実際に作り出せるルディーン君にコツを聞くこともできるからのぉ。このチャンスを逃すことはあるまい」

「そうですね。それでは私も一緒に練習をしてみようかしら」

 でね、ロルフさんの話を聞いたバーリマンさんまでやってみるって言いだしたんだよね。

 と言うわけで、セリアナの実の果肉から全部繊維を取り出した後に、僕はまずトイレットペーパーの見本を作る事になったんだ。


「これは、思ったより難しのぉ」

「そうですね。ルディーン君がやったように薄く作るどころか、紙にすらなりませんもの」

 セリアナの実の油に僕が魔力を注いでポーションにしてる横では、ロルフさんとバーリマンさんがトイレットペーパーを何とかクリエイト魔法で作りだそうと頑張ってるんだよね。

 でも、何でか知らないけど出来上がったものは繊維が丸まった小さな固まりだったり、四角い固まりだったりしたんだ。

 それもうまくねばねばが混ざってないのか、表面をこするとぼろぼろと繊維がはがれちゃうんだから困っちゃう。

 これじゃあいくら練習しても、多分うまくいかないと思うんだよね。

 だから僕、お肌つるつるポーションを作るのをいったんお休みして、どうしてそうなっちゃうのかを考える事にしたんだ。

 だって、あんなの横で見せられたら、気になって集中できないもん。


「どうじゃ、ルディーン君。なぜこうなってしまうのか、原因は解ったかのぉ?」

「う〜ん。多分だけど、ロルフさんたちが紙の事を知らないからこんな風になってるんじゃないかなぁ?」

 前にロルフさんから、クリエイト魔法は使う材料の事をよく知らないとうまくいかないって聞いたことがあるんだよね。

 でもこの場合は、材料だけじゃなく作るものの事もうまくイメージで来てないからこんな風になってるんじゃないかなぁ?

「紙の事とな?」

「うん。ねぇ、ロルフさん。このおしり拭きだけど、もし魔法で作らなかったとしたらどうやって作ると思う?」

「魔法を使わずにじゃと?」

 そう聞かれたロルフさんはしばらく考えてたんだけど、どうしても思いつかなかったみたいで僕に両手を挙げて降参じゃって言ったんだ。

 だから今度はバーリマンさんにも聞いてみたんだけど、やっぱり思いつかなかったみたい。

「あのね。紙ってホントはねばねばした草の汁を水に溶かして、その中に材料を入れて乾かして作るんだよね。でも、多分セリアナの実だとふつぷつ千切れやすいから多分その方法じゃできないと思うんだ。だから僕、魔法で作ったんだよ」

 前の世界のテレビってやつで見ただけだから、どんなやり方で作ってたのかまではよく覚えてないんだよね。

 でもあれで作った紙はもっと分厚かったし、おしり拭きみたいに柔らかくなかったから多分あの方法だともっと硬い繊維じゃないとできないと思うんだよね。

 だけど、それを知ってる僕は知らないロルフさんたちよりも紙に詳しいって事なんだと思う。

 それに前の世界で紙を実際に使っていたからこそ、最初からトイレットペーパーが作れたんだって僕、思うんだ。

「なるほど。という事はじゃな、この繊維を草の汁でくっつけるのではなく、浸したものを羊皮紙のような形にまとめると考えた方が近いと言うわけじゃな」

 でね、僕の説明を聞いたロルフさんはそれだけである程度イメージができたみたい。

 だから一度やってみるって言ってクリエイト魔法を使ったんだけど、

「ふむ。先ほどよりましにはなったが、流石にいきなりうまくはいかぬのぉ」

 出来上がったのはちっちゃくちぎれた紙のかけらで、それも四角くできてないうえに僕が作ったトイレットペーパーに比べてかなり厚かったんだ。

「ですが、一応紙っぽくはなりましたよ。それにほら、先ほどまでと違って繊維がぼろぼろと取れる事はありませんわ」

 でもバーリマンさんが言う通り、一応紙には違いないんだよね。

 だから、これならちょっと練習すればロルフさんもトイレットペーパーhが作れるようになるねって思った僕は、またお肌つるつるポーションづくりに戻ったんだ。


「それでは混ぜてみますね」

 それからちょっとして、お肌つるつるポーションが完成。

 ロルフさんたちの紙作りはまだうまく行ってないけど、今日の目的は新しく作ったのなら村と同じようにお水で溶かしても使えるかどうかを調べる事だから、みんなでこっちの実験をする事になったんだ。

 でね、ここでも村でやってるのと同じようにしたいからって、お水を混ぜるのはお母さん。

 水を入れた桶の中に、いつも村でやってるのと同じように僕の作ったお肌つるつるポーションを手ですくって混ぜてったんだ。

「はい。できました。これでいつも村でやってるのを同じようになってるはずです」

 ポーションを溶かした桶の中のお水は、見ただけだとこの錬金術ギルドにあったのを混ぜた時と全く変わんない。

 でも、ちゃんと調べてみないとほんとにおんなじかどうか解んないからって、ロルフさんは僕に鑑定解析をかけてって頼んできたんだ。

 で、結果はと言うと、

「あれ? やっぱりさっきのとおんなじだよ。薄まったポーションで、お肌をつるつるにする効果はほとんど無くなってるって出てるもん」

 新しいポーションでやってみても、やっぱり実験はうまくいかなかったんだ。



 皆さんはもうお忘れかもしれませんが、前にロルフさんが言っていた通りトイレットペーパーは一定以上の裕福層や貴族には受け入れられる可能性がありました。そしてその中には当然皇帝陛下も入っているわけで。

 今回、なぜ急にトイレットペーパーの事をロルフさんが話題に上げたかと言うと、クーラーを献上する際にこのトイレットペーパーも一緒に献上しようと考えたからだったりします。

 なにせこれもクーラー同様、この世界には無かった新しい発明なので。


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